人間にとって科学とは何か (1975年) (講談社現代新書)

人間にとって科学とは何か (1975年) (講談社現代新書)の詳細

国際政治学者モーゲンソーが科学の進歩が人間存在に及ぼす影響について論じた著書です。三部構成で、1部は科学と哲学・宗教・社会・政治との関係について本質的な考察がなされています。２部は、アメリカを例にとって科学の急速な進歩が政治的意思決定にどのような歪みをもたらすかをアメリカ政治を題材に論じています。３部は、以上の考察を踏まえて核兵器という最終兵器を生み出した現代社会において、核戦争が死の意味だけでなく、生の意味すら失わせることを指摘して締めくくられています。特筆すべきは、翻訳のすばらしさで、原文は決してわかりやすい文章ではないと想像されるのですが、このうえなく明晰な翻訳で、わかりやすい翻訳とはかくあるべきという感じです。こんなすばらいし著書が古本でしか手に入らないというのが本当に残念です。講談社学術文庫あたりで復刊してもらえないものでしょうか。